父の時計

カテゴリー │家族の肖像日記


こんにちは、毎日暑いですね。

スペインに行くときに、何も考えずに普段使っている
電波時計をはめていったのですが、当然時間が合わず、
手動で時刻を合わせる方法を知らなかったので、
外してスーツケースにしまっておいたんです。

帰国してしばらく窓際に置いておけば、自動受信するだろうと
タカをくくって早20日。

直らない…。えーん

代わりにヘルシンキで買ったムーミン時計をしていましたが、
仕事柄目上の方とお会いすることも多く、
いつまでもムーミンじゃいられない。

他にも何本か持っているけれど、普段着替えないので、
全部電池切れ…。困った…。

業を煮やして取扱説明書を引っ張り出しました。
これでダメなら修理だなぁ…。
ゴメンね、時計君。邪険にしたばっかりに。

この時計は、まだ私が修行先の行政書士事務所にいた頃、
頂いたボーナスで買ったもの。
買う時に、電池式にするか、自動巻きにするか、
はたまた太陽電池式にするか最後まで迷って、
結局発売されたばかりの太陽電池式にしたのです。

自動巻きは、亡くなった父が愛用していました。
末期がんで入院していた時、
「病院だとあまり手を動かさないから止まっちゃうんだ。
かっちゃん、代わりにつけててくれんか。」
と言って、愛用の時計を私に託した父。

男物の大きな時計を普段しているわけにもいかないから、
内緒で外では外していたけれど、
(その代り家や車の中でブンブン振っていた。)
見舞いの時には着けるようにしていました。

時々「ちょっと貸して。」というので時計を渡すと、
自分の腕にはめてみて、
「ああ、お父さん、また痩せちゃったね。
この前バンドの金具一つ外したばっかだに、
あといくつ外しゃあいいだかね。」
と寂しそうに言っていた父。

末期の食道がんで、これ以上手の施しようがないと
医者に言われ、最後は食事も摂れなくなって
痩せていくばかりでした。
私は時計を止めたら父の命も止まってしまう気がして、
ムキになってブンブン振ったものです。

結局時計より先に、父の命が止まりました。
愛用の時計は今も仏壇に供えてあります。
もう今は、時を刻むことはありません。

自分の時計を太陽電池式にしたのは、
きっとこんな思い出があったからだと、
今ならわかるのです。


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この記事へのコメント
私も…母の形見の手巻きの時計と…旦那のおばあちゃんの
手巻きの時計…半アンティーク?…半古物?…と言いましょうか?
大切にしております(^ー^)
分解掃除に出し、時々 思い出した時に…優しくネジを
回して…そっと耳に近づけて、“カチカチ…”となる
音を確かめています。

居なくなってしまった人を…思い出し…月日の経つ速さを
感じます。
私は…手巻き式が…好きなんだなぁ~(*^^*)i2ba9
Posted by 謎のS at 2013年07月16日 00:50
謎のS様、コメントありがとうございます<m(__)m>

私と父は複雑な関係にあったので、というか、私が父を一方的に嫌っていたので、最後に看病した40日間は、葛藤の毎日でした。今仏壇にある父の時計を見ると、あのときのガサガサした気持ちを思い出して切なくなります。

ご両親がご健在の方には、「親御さんを大事にしてね。」と言うようになりました。後悔先に立たずです。
Posted by かつかつ at 2013年07月16日 17:42
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